「ルビーの指輪」(1981年)、「赤いスイートピー」(1982年)など多くのヒット曲を生み出してきた作詞家・松本 隆が10月6日(金)から8日(日)までの3日間、恵比寿ザ・ガーデンホールで、名曲を楽しむイベント「風街ガーデンであひませう 2017」を行う。催しは、2015年に作詞活動45周年を迎え立ち上げたプロジェクト「風街レジェンド2015」に続くもので、今回は南 佳孝、斉藤由貴、太田裕美ら「風街レジェンド」を各日のゲストに迎え、いまの音楽シーンを牽引する秦 基博、クミコ、中川翔子、OKAMOTO’Sなどジャンルを超えたアーティストたちが競演する特別な夜になる。
──10月6日(金)から8日(日)まで恵比寿ザ・ガーデンホールで「風街ガーデンであひませう2017」が開かれます。
松本 隆 (作詞活動)45周年を迎えたときに、詞の朗読を含めた2枚組のアルバムを出して、そのコンサートを東京で行いました。“5年ごとにやっていこうか”と話していたのですが、あと3年待てなくて、47年目の今年も開かせていただくことになりました。今回のイベントはレジェンドたちと、いまの音楽シーンを引っ張っている若手たちを融合させていることが特徴です。最前線の人たちが、「風の谷のナウシカ」や「セクシャルバイオレットNo.1」などをどんな風にカバーしてくれるのか非常にたのしみです。バンドメンバーもドラム、ベース、ギター、ピアノと日本有数のプレイヤーを集めているので、聴き応えがあると思います。
──レジェンドアーティストは、南 佳孝さん(6日)、斉藤由貴さん(7日)、太田裕美さん(8日)を予定していますね。
松本 南 佳孝さんは60代になって、声により味わいが出てきたように感じます。「卒業」を歌っていただいた斉藤由貴さんは、デビューが春(1985年2月)だったから、卒業をテーマにした曲を作ろうと話していてね。「卒業」っていうタイトルの歌は当時なかったからいいねって。でも同時に3曲出たんだよね。尾崎豊の「卒業」(1985年1月)、菊池桃子の「卒業-GRADUATION-」(1985年2月)って。太田裕美さんは生涯現役の人。声のハリが衰えないですね。
──太田さんは、「木綿のハンカチーフ」がヒットしました。どんな経緯で生まれたのでしょうか。
松本 「木綿のハンカチーフ」(1975年12月)は、“松本くんが書く歌詞は都会的”と言われたことがきっかけで、じゃあ田舎の人にも共感してもらえる歌詞を書こうと思って。ディレクターが九州の人だったから、東京と九州の遠距離恋愛の話にしようと思って書いたんです。ディレクターが北海道出身だったら、南に行く列車だったかもしれませんね。
──世代も性別も超えて、歌詞に思いを重ねた方がたくさんいらっしゃいましたね。
松本 そうですね。2年前のコンサートのときに感じたのですが、客席には曲を遡って聴いてくれている若い人から、曲が生まれたときに若者だった人と、いろいろなお客さんがいて。世代差があっても、それぞれが持っている青春を重ねてくれていることに気がつきました。アンコールで舞台に上がったとき、お客さんの表情が幸せに満ちていて、“言葉ってこんな力があるんだ”としみじみ感じました。音楽と歌詞が掛け合わさると、ものすごい力になるんだと。
──47年間、歌詞制作をされてきた中で、気を配られているところはどんな部分ですか。
松本 説明をしすぎないことですね。余白を持たせること。間とか隙間って大事なんです。むかしニューヨークのマンハッタンで打ち上げ花火を見た事があったのですが、空が爆発しているみたいにボンボン上がって、情緒がなかった。その点、日本の花火大会は、“終わりかな”と思うとまた上がったりして、そこには美学があるんです。
僕は濁った状態が嫌だから、イメージで言うと、不純物を取り除く作業です。日常の中にある亀裂を美しいと感じること。それは余裕でもあるんです。夕陽を見てキレイと感じるのか、気付かず通り過ぎるのか。美しいと感じる心を増幅させると、それは文化になる。
歌詞はその積み重ねで生まれていきます。いまの日本の社会に欠けているものでもあります。
──過去のインタビューで、作詞活動は歯磨き粉のチューブをしぼり出す作業とお話しされていました。
松本 いまも苦労しています。“もう出ないよ”と思う気持ちは、ずっと変わりません。
毎日スランプです。書き方は、20歳で組んだ「はっぴいえんど」のときと変わりません。ピカソの青の時代みたいに、分かりやすく以前と、がらっと変わったということはありません。
──松本さんの世界に浸ることができる3日間は、本当に貴重ですね。
松本 3日間で計6時間。連続して松本 隆の歌詞の世界に触れることができます。
世の中にライブはいくつもあるけれど、僕の言葉に触れることができるライブはここにしかない。日本で最も上質な部類の曲が聴けると思います。
僕の詞を連続して何時間か聴くという経験はあまり無いかと思いますが、合計6時間の「連続松本 隆体験」をすると、心が解放されて不思議な力が湧いてくるんです。
僕は一昨年の45周年のときにそれを体験し、ちょっとびっくりしましたが、その感動が今回もあると思います。すると音楽の中にある言葉に対する考え方が変わると思います。
若い人には“歌詞なんかいらないんじゃない”という人も多いのですが、そのような方たちも、今回のイベントを体験すると、ものすごく今までの人生を損していたと感じるのではないでしょうか。
また、レアな曲を聴くことができる感動もあります。例えば「マクロスF」の挿入歌として中島 愛さんが歌ったヒット曲の「星間飛行」は、一部のアニメファンしか原曲を知らないと思います。僕自身、そういう未知の世界に触れるのが楽しみなんです。
──当日は、お酒を飲める「BAR風街」が開店し、DJが松本さんの楽曲のレコードを回す「CLUB風街」も行われますね。
松本 松本のことを好きな人が、歌詞について語ったり、ライブの余韻に浸ったり、自由に楽しんで欲しいです。僕もいるかもしれないですし。
──松本さんを動かす原動力は何ですか。
松本 作品が残ることが1番の喜びなので、いまの状態はとても幸せです。斉藤由貴さんに歌っていただいた「卒業」は、いまでも季節になるとラジオで流れてくる。そういうスタンダードになっている曲は、まだこれから触れるかもしれない未知の人たちがいる。それは喜びです。新しいものを作るのは白紙の試験答案に対峙しているようで、地獄だけど、残ったものを聴くときは天国。
47年間は、長いようで短かった。静かな余生は柄じゃないから、残りも突っ走るしかないですね。
サッポロ生ビール黒ラベルPresents「風街前夜祭2017」
10月5日(木) 恵比寿ザ・ガーデンホール
18:00 開場、19:00 開演
出演:妻夫木聡 / 松本 隆 / リリー・フランキー
サッポロ生ビール黒ラベルPresents「風街ガーデンであひませう2017」
10月6日(金)7日(土)8日(日) 恵比寿ザ・ガーデンホール
恵比寿ザ・ガーデンホール全体が「風街」と化す奇蹟の大人のための3日間、いや前夜祭も含めの4日間!時代も、世代も超えて歌い継がれる名曲たち。最高の音楽と美味しいお酒に是非会場で酔いしれよう。さあ、大人のパーティへようこそ!
>>>出演者・演奏曲目など詳細はオフィシャルサイトにてご確認ください。