ダークダックスのコンサートで低音の声の魅力を知ったことは今の自分のボーカル・スタイルに繋がっているところはあるんじゃないかと思います。あれから低音マニアになった(笑)。小学校の頃もシャネルズの低い音をハモる人の「ボンボンボン」っていう声、すごいなと思っていたし、『キャット・ピープル』という映画でデビッド・ボウイが主題歌「Putting Out Fire」を歌っているのを観た時も、オクターブ下でのハモり、すごいなと思いましたから。自分も最近、結構低い音が出るようになってきたんですよ。高いほうが出るよりも、低いほうが出るほうが自慢という(笑)。その原点となっている音楽体験はダークダックスを観たことですね。
エキセントリックなファッショニスタとして他の追随を許さないcari≠gariのヴォーカリストとしても活躍中の石井秀仁のソロ・ユニット、GOATBEDをみなさんはご存知だろうか。ゲーム音楽にアニメの主題歌、アイドルのプロデュースや最近ではリミキサーとしても鬼才を発揮するGOATBEDが、年内最後(?)のワンマン<Se Tag Aya-Re:Public GB@Publicity>を8月30日、31日に東京・世田谷パブリックシアターにて2デイズ開催する。これまでの配布音源などをリアレンジしてまとめた最新作『FANDEATH』(会場限定発売)では、ストイックに作られたミニマムかつエレクトロなサウンドに、そこはかとなくノアールでロマンティックで妖艶な匂いを漂わせ、ときにはそれが歌モノにもなるという独自のスタンスでテクノなダンスミュージックを展開していた彼ら。音源だけではなくビジュアル、ライブに至るまでトータルアートとして世界観を表現していくことを得意とするGOATBEDが、今回のワンマンではどんなものを見せてくれるのか。石井に話を聞いた。
4月23日・24日の京セラドーム大阪公演からスタートして、30万人を動員した氷室京介の4大ドームツアー「KYOSUKE HIMURO LAST GIGS」の本当のラストのステージとなるのが5月23日の東京ドームだ。本来ならば、このツアー自体、開催されるはずのないものだった。2014年の25周年ツアーのステージ上で難聴によるライヴ活動の無期限休止を発表して、そのファイナルの7月20日の横浜スタジアムがラストのステージとなるはずだった。が、落雷によるライヴ中断、肋骨の骨折によるコンディション不良から、「このリベンジをどこかで必ず」と氷室本人が宣言して実現したのが今回のこの「LAST GIGS」ということになる。そのツアーの最終地点の東京ドームは1988年4月4日、5日にBOØWYの解散コンサートが開催された場所でもある。またしても東京ドーム!ポイントポイントでここに立つように定められているということなのかもしれない。
「TO THE HIGHWAY」が始まると、ハンドクラップ、コール&レスポンス、シンガロングが起こっていく。続く「BABY ACTION」も観客が歌いまくり。氷室もハンドマイクを客席に向けている。ただ聴くだけでない。観客それぞれが氷室京介の名曲の数々を体に刻んでいくようにして味わっていた。この日の曲目は最後の夜ということもあって、1982年にBOØWYの一員としてデビューしてからの約35年の音楽活動を総括するように、BOØWYの曲もソロ曲もたっぷり演奏された。観客への感謝の思いを込めて、みんなが聴きたいだろう曲を演奏していくということだろう。と同時に、35年のキャリアの中でのターニング・ポイントを担ってきた重要曲も散りばめられていた。つまり35年間の軌跡を体感できる構成にもなっていたのだ。
BOØWYの4枚目のアルバムから自分の曲は自分でアレンジして、デモテープを作るようになったこと、そうした制作のスタンスがあったから、今の自分があることなどが語られて、そのアルバム『JUST A HERO』の中から「ROUGE OF GRAY」「WELCOME TO THE TWILIGHT」「MISS MYSTERY LADY」も披露された。BOØWYのナンバーではあるが、ソロ・アーティストとしての氷室京介の原点でもある曲たち。大きな歓声とハンドクラップが起こったのはBOØWYのファーストシングル「ホンキー・トンキー・クレイジー」のカップリング曲「“16”」。この曲はひとりの人間としての氷室京介の原点の曲でもありそうだ。「“16”」が16歳の過去の自分の姿を描いた歌だとすると、続いて歌われた、2011年12月に配信で先行リリースされた「IF YOU WANT」は未来へ進んでいこうとする者の道標となっていく歌ではないだろうか。氷室の渾身の歌声にドーム内が震えていく。最後の夜だからこそ、この歌の中の“道なき未知を進め”“果てしなき旅をゆけ”といったフレーズがズシッと強く響いてくる。もちろん歌い手としての表現力も素晴らしいのだが、氷室京介が歌うことによって生まれる説得力は唯一無二のものだ。
そんなMCにも熱くて温かい拍手。メンバー紹介に続いてのアンコールの1曲目は“愛と冒険は続き”“陽はまた昇る”と歌われる「The Sun Also Rises」。この曲もこの日の氷室の思いを代弁するかのような歌のひとつ。魂そのもので歌うような「魂を抱いてくれ」、観客の歓声やハンドクラップも一体になって、ビートを刻みながらの「IN THE NUDE」、観客も一緒に歌いながらの「JELOUSYを眠らせて」などなど。「懐かしいヤツいくぜ!」という言葉で始まったのは「NO.N.Y.」。どの曲もそうなのだが、この日の演奏が生で聴く最後の機会ということになる。5万5千人が声を張り上げ、ハンドクラップしている。すべての曲がかけがえがない。そんな思いがドーム内に充満している。氷室が渾身の歌を歌い、観客が渾身の力で受けとめている。「サンキュー、東京ドーム!バイバイ!」と言って、氷室は投げキッスをして、ステージを去っていった。
終演後、スクリーンに「THANK YOU ALL FANS」というメッセージが映し出された。氷室からの愛と感謝、ファンからの愛と感謝、お互いの気持ちが融合して、とてつもないエネルギーが生まれた夜だった。最後だが、最後ではない。そんな不思議な余韻が残った。もちろん未来が約束されたわけではないが、未来が完全に閉ざされたわけでもない。いつか新作が届けられる日がくるだろう。そしてもしかしたら……。未来へと思いを馳せてしまったのは、この日演奏されたたくさんの曲たちから、先へ先へと進んでいくパワーがほとばしっていたからだ。BOØWYは日本語のビートロックのパイオニアだった。ソロ・アーティストとしての氷室京介もたくさんの新境地を開拓してきた。この「最後の夜」すら画期的だった。開拓者にして冒険者。この血は今後も変わることはないだろう。伝説はまだまだ終わってはいない。書き加えられるべき、未知のエピソードはまだまだたくさん残されているに違いない。
2016年の始めに突如解散を発表し、ヴィジュアルシーンに衝撃を走らせた彼らは、最期の場所として選んだ5月26日のZepp DiverCityまで、【解散】を意識することなく、そして、意識させることなく、彼ららしくその最期の時へと向かった。2月にはニューシングル「SUICIDAL MARKET〜Doze of Hope〜」をリリースし、3月からは自らが主催する『BORN BATTLE 2016 DIE or DIE CLIMAX 7DAYS』で、現在のヴィジュアルシーンを牽引するライバルバンドたちと熱いバトルライヴを繰り広げていた彼らの勢いは、解散を選んだバンドとは思えない熱を放っていたのである。故に、彼らが選んだ場所はZepp DiverCityの当日も、最後の最後まで【解散】という事実を実感することが出来なかった。MCの中で猟牙が、“気付いたら今日になってたのがBORNらしいなと思う”と語ったが、まさに、彼ら自身も、自らの人生そのものでもあったBORNがこの日で止まるという実感が沸かぬまま、“この日”を迎えていたのではないかと感じた。しかし。いかにも解散ライヴ的なライヴではなく、最後までBORNらしくぶつかった最期の時は、最高に熱い夜となった。
SPYAIRが約束通り、今年も真夏の野外ライブ「JUST LIKE THIS 2016」を開催する。バンドの活動停止を経て、改めて自分たちが育った“原点”に戻ろうと昨年、山梨・富士急ハイランド・コニファーフォレストにて4年ぶりに単独野外ライブ「JUST LIKE THIS 2015」を開催。1万人のオーディエンスを熱狂させたあの熱いライブが、今年はさらにパワーアップして7月30日、同場所に戻ってくる。DI:GA onlineではこのイベントを盛り上げるべく、こらから2週に渡ってメンバーのIKE(Vo)とKENTA(Ds)を交えて<JUST LIKE THIS>を大特集。彼らが「JUST LIKE THIS 2015」を振り返りつつSPYAIRと野外の関係について語った前編、今年の「JUST LIKE THIS 2016」のテーマ“ロックスター”について語った後編、それぞれお楽しみください。
インタビュー:東條祥恵
──今年も7月30日、SPYAIR真夏の単独野外ライブ「JUST LIKE THIS 2016」の開催が決定しました。
IKE いろいろあるんだけど、俺は登場シーンが忘れられないですね。客席の真ん中に作った花道の先端から登場した瞬間「みんなの真ん中にいる」というのをすっごい感じられたオープニングで、とても幸せだったんですよ。そこからステージを見ると、そこにはメンバーがいて。俺とお客さんが一緒になってメンバーを攻めてく感じがしてゾクゾクした。
KENTA 1万人とIKE対3人じゃあ俺ら勝ち目ないじゃん(笑)
IKE 俺がバンドのライブ観てて、すげぇ勿体ないなと思うのが、決められた場所だけでライブすることなんですよ。ステージって、こっちが行動起こせば、いくらでも広がりますからね。こっちがお客さんを包み込むぐらいの位置に移動して演奏するだけで、ステージは無限なんです。これは、俺のポリシーにしたいなと思ってることなんだけど。どんな会場でやるときも、俺はちゃんと人のそばで歌いたい。生のライブのときぐらい、人の近くで歌ってる様を見せたい。だから、お客さんと“ゼロ距離”のところまで近づくことを今後もずっとやっていきますよ。そのきっかけを与えてくれたのが、去年の富士急のオープニングだね。
IKE 野外には屋内でやってるだけじゃあ感じられないものがあるんです。昨今外で音を鳴らすのって本当にハードル高いとおもうんですよ。でも、俺らはたまたま日常的にライブ活動を外でやってきたから野外の音を知っている。『こんないいものを知らないで死ぬなんてかわいそうじゃん』っていう意味でこのイベントで継続していって。野外の音の気持ちよさをファンにも、いったら後輩たちにも届けていきたい。それが、俺らの想いかな。「ウッドストック1999」でKORNがさ、『Are you ready?』っていってライブが始めるシーンがあるんだけど。俺、あれがすっごい好きで(笑顔)。そういうデッカイ野外フェスに憧れがあるんでしょうね。俺自身も。憧れの一つの形なんです。この「JUST LIKE THIS」は。
2016年5月31日(火) 赤坂BLITZ
Live Tour 2016「RockでなしRockn’Roll 2016 ~海賊大祝祭~」
REPORT:兵庫慎司
PHOTO:緒車寿一
新しいバンド、というかバンドのような総勢11名の大集団=「海賊」で作った4年ぶりのニューアルバム『海賊盤』のリリース・ツアーのファイナル。ギター:町田昌弘、ベース:TOMOTOMO club(THE BEACHES/THE JERRY LEE PHANTOM)、ドラム:マシータ、ギターとかコーラスとか色々:ヨースケ@HOMEが基本メンバー。